クリエイティブ系の定番ソフトと言えば、アドビ・イラストレーターとアドビ・フォトショップがあまりにも有名です。1980年代の後半にMac版が発売されて以来、主に印刷関係の現場で利用されてきました。グラフィックデザイナーやイラストレーター、フォトグラファー、DTPオペレーターなどが主に利用するプロ向けの高品質なソフトです。
そのため、一般にはどうしても敷居が高いイメージをお持ちではないでしょうか。
率直に言って、アドビのソフトはプロ向けのソフトということで少々お値段が高めです。昔は1本で10万円近くもする高額なソフトでしたが、現在は『Adobe Creative Cloud』というオンライン配信サービスを月額課金で利用できます。
月々の料金はプランによりますが、ディスク版を買っていた時代に比べればだいぶ安いと思います。なによりも、お手軽でとっつきやすくなったことは大きいです。また、各種ソフトは無料体験版をダウンロード出来るので、使ったことがない方でもまずはそこから始めてみるといいでしょう。
イラレとフォトショといっても、それぞれのソフトの性質上作り方や仕上がりがかなり違います。ざっくり言うと、イラレの方は図形を組み合わせる感覚で形を作り上げていきます。それに対して、フォトショはキャンバスに筆で色を塗っていくような感覚です。
こうした性質上各々のソフトで出来ることに違いがあります。ただし、同じアドビのソフトであるため、基本部分は共通したツールが実装されています。
では、実際にロゴ作成をしてみましょう。まずは、下書きを用意すると作業が楽になるので、フォトショップの作業から入ります。アナログの場合は手書きの物をスキャナで取り込むか、写真に撮ってフォトショで開きましょう。
もしくは、フォトショで白紙のキャンバスに下書きになる絵を描いていく方法もあります。そうすれば全部画面上で処理できます。イラレとフォトショは完全に互換性があるので、データのやり取りはストレスなく出来ます。
作成したデータをどこに使うのかによって、作るデータの保存形式やカラーモードが違ってきます。作ったロゴをインターネット上にアップするのであれば、保存形式はgif、png、jpgが一般的です。また、カラーモードは「画面上で見るデータ」と言うことになるので、必ずRGBで作るようにしましょう。
最初にファイルを作成する段階からRGBで作ります。これは、イラレとフォトショ共に共通です。また、紙媒体で使うデータを作る場合は少々印刷の知識がいります。まず、カラーモードはCMYKにして下さい。RGBのままプリントすると色味が違ってしまいます。
なぜかと言うと、画面上の色の表示は3色で構成されているのに対し、カラー印刷は4色以上でプリントされます。使われている色もRGBとCMYKでは根本的に違うため、RGBを4色印刷すると蛍光色のような変な色味になってしまいます。
これは、一般的な家庭用のプリンターでも、印刷所の機械でも同じです。この点もイラレとフォトショップ共に共通です。さらに、保存形式についてですが、イラレの場合は少々注意が必要です。家庭用プリンターで出力するだけならデフォルトのai形式で問題ないのですが、印刷所に送るデータの場合はEPS形式が良いでしょう。
これにより、様々なグラフィックソフトで編集出来るようになります。なお、保存形式は印刷所から指定される場合もありますので、データを送る前に確認した方が良いと思います。
先にお話ししたように、イラレの場合は図形を作成するような感覚で作業を進めることになります。まずは、新規ファイルを作るところからになりますが、大きさは特に関係ありません。イラレのデータはベクターデータと言って、いくら拡大縮小をしても画像がぼやけることがありません。
そのため、作る大きさに捉われなくて済みますが、小さすぎても色で潰れてしまうので、扱いやすい大きさで作りましょう。作業の流れとしては、ファイル>新規>開いた新規オプションのウィンドウで、詳細オプション>カラーモード>RGB(Webデータ用)もしくはCMYK(印刷用)となります。
なお、ファイルの大きさは用途に合わせて任意で決めて下さい。さらに、名前は保存するときにつけることになるので、新規ドキュメントのままでもいいと思います。次に、最初に用意した下絵をイラレのレイヤーに貼り付けます。
フォトショップで保存しておいた下絵の画像ファイルをドラックしてイラレのアイコンに重ねるだけで、そのまま画像データとして開くことが出来ます。または、ファイル>開くで読み込むこともできます。あとは、単純に下書きをトレースしていくだけです。
ちなみに、フリーの曲線はペンツールで描いていけば楽に線が引けます。ただし、ベジェ曲線の扱いに慣れていないと少々難しいかもしれませんが、コツは線を曲げたい方向に沿ってハンドルを伸ばすことです。例えば、左側に線を描いていきたいのに、真上にハンドルを伸ばせば形が歪んでしまうので、向かいたい方向を意識しながらペンを進めます。
また、長方形や楕円形のツールをうまく組み合わせてロゴの形を作っていきます。例えば、シフトを押しながらツールを使えば正方形や正円を描くことが出来るので覚えておきましょう。他にも、形の分割や合体、左右反転に拡大縮小など様々なツールがあるので色々試してみるといいでしょう。
一通り作業をしたらファイル>保存でデータの保存をしますが、Webデータの場合はファイル>書き出し>Web用に保存を選択し、最適化ファイル形式をgifなど任意のものにして下さい。
本来フォトショップは写真加工のソフトで、絵を描くためのソフトではありません。そのため、他のペイントソフトのような手ブレ補正がないというデメリットがあります。ペンタブレットの扱いに慣れていない場合、いきなりフォトショで何かを描こうとしても難しいと感じるかもしれません。
しかし、画像加工のツールは非常に充実していて、その分奥が深く出来ることがとても多いのが特徴です。ファイルを作る前に注意が必要なのは、イラレと違い、画像の大きさを最初にきちんと決めなければならない点です。
フォトショップのデータはビットマップと言って、拡大縮小するとぼやけてしまいます。丁度写真を引き伸ばせばボケてしまうのと同じです。したがって、ファイルを作る際は目的にあった大きさで作りましょう。作業の流れとしては、ファイル>新規>開いた新規オプションのウィンドウで、解像度72〜350dpi、詳細オプション>カラーモード>RGB(Webデータ用)もしくはCMYK(印刷用)となります。
ファイルの名前はイラレと同じで後回しで良いです。なお、解像度についてですが、特に印刷所に送る実データの場合は350dpi以上にしましょう。この数値が小さいと画像が小さくなります。そして、イラレの時と同じく下絵データを開きます。
フォトショのアイコンに下絵データを重ねるか、ファイル>開くから選択して開きます。フリーバンドで描きたい場合はブラシツールで作業するのが基本ですが、きれいに線を引きたい場合ペンツールが有効です。パスウィンドゥで新規パスを作成し、そこにイラレのベジェ画と同じ要領でパスを描いていきます。
作成したパスは選択範囲に変えることも出来ますし、「パスの境界線を描く」で線画を描いたり、「パスの塗りつぶし」でベタ塗り化したりすることも出来ます。つまり、パスを作って保存しておけば、フリーハンドで絵を描くよりも楽になおしが効く状態で作業が出来ます。
また、各種フィルターでテクスチャー効果やエンボス加工、影の有無など、イラレとは違った雰囲気のロゴを作成することが出来ます。もちろん、互換性を生かしてイラレのデータをフォトショップで加工することも可能です。
なお、フォトショップの場合、レイヤーを統合しないデータの場合はPSDのまま保存でOKですが、ネット上で使うデータはイラレと同じくWebに保存して下さい。
イラレとフォトショの基本的な作業を軸にロゴ作成を進めるお話をしてきましたが、既存のフォントを加工、もしくはトレースしてロゴ化するというテクニックもあります。もちろんこれは作成するロゴが文字のロゴなのかシンボル的なマークなのかにもよります。
文字のロゴの場合、既存のフォントを参考に作成した方がイメージを掴みやすいと思うので、デザイン初心者にはオススメです。ただし、フォントの規約に必ず従って利用して下さい。ここが重要で、使うフォントは当然著作権フリーのフォントに限ります。
しかも、それぞれのフォント毎に利用規約があると思いますので、その規約に従って“画像加工OK”のものにして下さい。この条件をクリアしたものであれば、イラレやフォトショで加工してロゴのデザインを作っていくことが出来ると思います。
なお、イラレの場合は書式>アウトラインを作成で文字をパス化出来ます。これにより、細かい変形や付け足しなどの加工が容易になります。まずは、お試し版のイラレかフォトショをインストールして、既存のフォントなどを参考にしつつロゴ作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。